人生を彩る旅:美しい南の島(トラック諸島、マーシャル諸島)を巡るアイランドホッパーと太平洋戦争編

From 葉山 拓哉

飛行機好きなら知っているアイランドホッパーとは?

皆さんはアイランドホッパーというフライトを聞いたことがありますか?グアム、ハワイ間のミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国の美しい太平洋の島々を次々と巡る世界でも珍しいフライトです。グアムからであれば、チューク(トラック)、パナペ(ポンペイ)、コスラエ、クワジェリン、マジュロを訪れ、最終目的地のハワイへと至ります。途中降機が多いため、グアムからマジュロまでで8時間、マジュロからハワイが4時間かかります。

エコノミークラスであれば、狭い機内で離着陸を繰り返す便は苦行ですが、旅行者には美しい島々に短時間ながら離着陸できるとあって人気の路線です。乗客の過半は観光客ではなく、島民の移動ですので、機内でも現地気分満載です。軍事基地のあるクワジェリン以外はすべての空港で30-40分程途中降機できますので、ちょっとした入国気分を味わうのも良いでしょう。

各島の特徴を簡単に上げてみます。チュークはトラック環礁が第二次世界大戦時の沈船を見ることができる沈船ダイビングのポイントとして、世界的に有名です。ポナペはマンタを見ることができるダイビングとムー大陸との関係性も一部で連想されるナン・マトール遺跡で知られています。クワジャリンは米国軍の軍事基地があるため、関係者以外は一切降機できません。マジュロは太平洋に浮かぶ真珠の首飾りと例えられるマーシャル諸島の首都です。マーシャル諸島といえば、米国が1940年代以降10年超に渡り、50回以上の核実験を実施した場所(特に著名なのはビキニ環礁)としても有名です。

世界でも珍しい珊瑚でできたマーシャル諸島

マーシャル諸島は世界でも4つしかない珊瑚でできた国です。首都マジュロも珊瑚島から形成されています。小さな島を繋げ、文字通りドーナツ状の環礁となっています。山や川はなく、最高でも海抜6mしかありません。マーシャル諸島にあまり陸地はないのですが、領海は200万㎡と日本の領土の5倍超もあります。人口も5万人と少なく、観光客もあまりいません。青さが際立つ、静かな環礁でゆっくりとしたいという人には最適な場所の一つです。

このマーシャル諸島は隣のミクロネシア連邦に比べてかなり幸せそうに、そして裕福に見えます。マーシャル諸島の一角であるクワジェリンは米軍に基地として貸与しています。また、核実験の補償として、今でもかなりの金額が米国から支払われています。そして、マーシャル人は米国との取り決めにより、米国への訪問、滞在、就労が自由になっています。悲劇の歴史は消えることはありませんが、これらの経済的な便益は計り知れないでしょう。その便益を最大化すべく、今ではマーシャル諸島より米国に住むマーシャル人の方が多いようです。

また、米軍基地のおかげで多くの雇用が生まれています。クワジェリンの近くにクワジェリンで働く人の住むイバイ島があり、同島は世界一の人口密度を誇ると言われています。米国人を始め、多くの外国人が基地で勤務するために居住しているからです。飛行機で乗り合わせたイバイで働くフィリピン人は素晴らしいダイビングがタダでできるので、牢獄の様に狭いが気に入っていると言っていました。マーシャル諸島のダイビングは特に珊瑚で知られています。珊瑚からできた環礁なので、当然かもしれませんが、圧倒的な量の珊瑚は圧巻です。

こういった背景もあり、おそらく北太平洋の独立島嶼国として最高の経済水準、治安の良さを誇っているのでしょう。隣のミクロネシア連邦と比べると圧倒的に恵まれているように見えます。歴史の糸とどう絡み合うか、大国との関係がどうなるかは平和な太平洋の島国に計り知れない影響を与え続けているのです。

また、日本の統治時代を反映して、日本姓の人や日本語が語源となっている言葉が多く残されており、「サッポロ一番」が国民食の一つとなっています。高級ホテルのレストランでもメニューに載っている程です。

近くて遠い国「ミクロネシア連邦」

ミクロネシア連邦の各島はダイビングでその名を知られています。マンタが見たいなら、ポンペイです。沈船ダイビングであれば、帝国海軍の大艦隊が沈んでいるチュークです。チュークのトラック環礁は東京23区より大きい世界一のラグーンで見応えがあります。巨大で静かなラグーンを見ると、大艦隊の停泊地に選ばれたのがすぐに分かります。国際空港のあるモエン島からボートで1時間程南にあるキミシマ環礁は50m超の圧倒的な透明度を誇る海として有名です。数十年後に大艦隊が観光資源として、島に多くの雇用、経済的便益をもたらすことになるとは戦時には誰も想像していなかったでしょう。

チューク(トラック環礁)は世界中からダイバーを引き付ける

美しい海と沈船により、チュークは全世界からダイバーを引き付け、私が訪問した際も欧州から30時間以上かけて来た20名以上の団体が複数いました。また、無人島に宿泊する施設もいくつも運営されていますので、孤島で波音を聞きながら星空を見たいという人には面白い経験になると思います。

太平洋の島々には日本軍が建設した建物がいくつも残されています。堅固な造りであるため、修繕して現在も使用されているものが多くあります。現地の人が住んでいるものもあれば、学校等の公共施設として使われているものもあります。チュークにはミクロネシア連邦で最高峰の高等学校であるザビエル高校があります。この建物は旧日本軍の通信施設です。2008年にマブチモーター創業家の篤志により改修され、深い緑の大自然の中で、太平洋の島々の俊英達が勉学に励んでいます。

19世紀後半に農業振興のために、日本は太平洋の島々に進出しています。第二次大戦の足音が聞こえるまでは、これらの島々は日本の投資もあり、大いに栄えたようです。第二次大戦が始まる頃には、日本の支配も高圧的になり、非人道的な行為も行われたでしょう。

美しい海の青さを目に、人類史上最大の戦争「太平洋戦争」を再考する

日本兵を祖父に持つ島民が現在でも多くおり、日本への心象は良好です。「戦争では大変な目にあい、多くの島民が亡くなった。だが、悪いのは戦争だ。日本兵は皆死んでしまった。」と複数の島民から話しかけられました。日本は80年以上たった現在も今建設するよりも丈夫な建物を幾つも建てている、とのことです。もっと多くの日本人、特に若い人達に祖国を想いながらもトラック環礁で亡くなった英霊達に祈りを捧げに来て欲しい、と話していました。

歴史認識でくすぶり続けている隣国の印象と大きく異なります。

終戦から70年以上が経過し、いまだに一次資料を丹念に調べ上げた客観的な歴史的事実及び時代背景の深い考察に基づく、中立的な歴史の検証は世に多く出ていません。歴史とは多くの場合、勝者もしくは時の為政者の解釈によって編集されるものです。

2016年、2017年の主要国選挙では、事実でなく、こうなって欲しいと事実(Alternative fact)等が流布し、意図を持った者が投影したい世界観・政治観が事実として世に流れてしまう恐ろしい社会が登場してしまいました。現在でも偽ニュースが流布するくらいですから、80年も前のこととなると客観的な史実を丹念につなぎ合わせるのは非常に労を要する作業でしょう。

20世紀で世界の流れを最も激動させた第二次世界大戦を客観的に総括する研究がなされる日を想うチューク訪問となりました。祖国のために短い命を捧げた百万人単位の人達の想いが報われる事実が広く知られる日が来るのを願ってやみません。

カリブ海の島々を巡ると大航海時代とその後の植民地時代における欧州列強の欲望とアフリカ人の悲劇が目に浮かびます。太平洋の島々を巡ると戦間期の日本の領土拡大と戦線縮小の凄まじさが見えて来ます。今では、大戦時の残骸で現地の子供たちは遊んでいますが、照り付ける太陽と灼熱の陽を受け、深い青に染まった海の満ち引きは80年前と変わらないでしょう。

美しい太平洋の島々を眺める世界でも珍しいアイランドホッパーに乗りながら、太平洋の歴史に想いを馳せる旅はいかがでしょうか。素朴でおおらかな現地の人はあなたを温かく迎えてくれるでしょう。そして、太平の洋である平和な太平洋で行われた世界史上の大戦争とは何だったのか、考えてみる良い機会になるでしょう。

 

投稿者プロフィール

葉山 拓哉
葉山 拓哉国際金融コンサルタント、投資家
世界銀行グループ(ワシントンDC本部、新興国現地事務所)、投資銀行(ニューヨーク、ロンドン、東京)にて勤務。 世界各国で約50の投融資案件に携わり、新興国を含む世界の金融・経済情勢に精通。自己資産は世界中のあらゆる商品に投資。世界有数のビジネススクールを卒業し、世界銀行グループにおいても世界の一流の人材と親交を深める。一方で、冒険家・旅行家として世界140ヵ国へ歴訪。傍ら、アフリカ、欧州等の大陸最高峰への登頂を果たす。

【無料レポート】GetRichSlow(着実に豊かになる方法)

世界銀行グループの元職員。140ヶ国を歴訪したお金のプロが教える「お金」と「会社」から自由になる方法



すべての無料レポートは、こちらかダウンロードすることができます。

この記事が気に入ったら いいねしよう!

ABOUTこの記事をかいた人

世界銀行グループ(ワシントンDC本部、新興国現地事務所)、投資銀行(ニューヨーク、ロンドン、東京)にて勤務。 世界各国で約50の投融資案件に携わり、新興国を含む世界の金融・経済情勢に精通。自己資産は世界中のあらゆる商品に投資。世界有数のビジネススクールを卒業し、世界銀行グループにおいても世界の一流の人材と親交を深める。一方で、冒険家・旅行家として世界140ヵ国へ歴訪。傍ら、アフリカ、欧州等の大陸最高峰への登頂を果たす。